1.舟はまた壊れる

2.別離

3.森

4.雪

5.真っ白いところ

6.遺伝子の夜

7.記憶と暮れる

8.夜

9.痛みの後に

 

 

1.舟はまた壊れる

 

あの舟に乗っていた時は

素敵などこかへ

向かっていたのに なぜ

 

湧き出る喜びは 嘆きと隣合わせ

傾いた舟に

気付けなかった 愚かな僕は

深い海の底へ 沈んでいった

 

誰もいない 光も見えない

絶望の中で 息だけをただ続けている

 

こんなところはもう嫌だと 叫ぶ力も

とうに尽きてしまって

もう抜け出せない

もう抜け出せない

もう逃げ出せない

 

 

こんな僕を 優しいあなたが

また救ってくれたのに

澱んだ水に 染まった僕は

見慣れた 同じ場所に また戻っていた

 

つながりも愛も 溢れているのに

頭の中から 全てが消えるのは なぜ

 

何にも見えなくなって 暖かい言葉を

殺してしまった夜が

僕をまた誘う

暗いところへ

まぶしさに慣れる前に

舟はまた壊れる・・・

 

 

2.別離

 

あの人の後ろ姿

闇の中に消えていった

靴音だけが響いて

夜の中溶けていった

 

あの人は階段を昇り

暗がりのドアを開けた

本当にお別れだね

そこからは何が見える?

 

さよならと祈ってみても

あの人の心には届かないかも

しれないけど繰り返す

そこにはいけないから

 

あの人は行ってしまった

僕の知らない遠くへ

一人きり何を思い

ドアを閉めたのだろうか

 

さよならと祈ってみても

あの人の心には届かないかも

しれないけど繰り返す

それしかできないから

 

街はいつもと変わらず

明かりで溢れてるのに

僕の音が何もかも

変わってしまった夜

 

 

3.森

 

光の見えぬ森の中で

虚しく響く 叫び声

 

迷いの先に 幸せがあると

夢見た昨日が 消えてゆく

 

 

出口なんて ないのだと

闇が誘ってくる 今日もまた

 

 

光の見えぬ 森の中で

淋しく響く 叫び声

 

迷いの先に 幸せがあると

信じさせてよ 教えてよ

 

 

4.雪

 

ねぇ おいでよ 雪がふるのに

ねぇ おいでよ 白い花

ねぇ おいでよ どこにいるの

ねぇ おいでよ 白いまま

 

暗い風が吹いて  雪はやがて

黒い嘆きになって 消えてゆく

 

ねぇ おいでよ 雪がふるのに

ねぇ おいでよ 白い花

 

暗い風が吹いて  雪はやがて

黒い嘆きになって 消えてゆく

 

 

 

5.真っ白いところ

 

綺麗なところを 目指してみたが

いくら歩いても 辿り着けない

 

切に欲しいのは 澄んだ心と

安らぎとときめき それだけなんだ

 

真っ白いところは どこにあるのか

この欲望が 邪魔をするんだ

 

 

「あなた」達が 生まれた後で

気付いたんだ 抱き締めあって

 

僕の身体を 締めつけていた

あの欲望が 輝きなのだと

 

真っ白いところを 目指していって

最後にあるのが 赤い血ならば

 

真っ白いところは 僕の幻

全てを認めて 消してしまおう

 

 

6.遺伝子の夜

 

街に溢れる二人が 一つになる夜に

行き場のない溜息が 閉めきった部屋に漂う

僕は僕の遺伝子を 飲み込んでいる

濁ったそれは少しずつ 心の中に溜まっていく

 

燃えない恋ばかりが 積み重なってゆく そして

灰色の日々もいつか 赤い血に染まる

 

美しいあなたの心 ずっと探してる

僕が濁りきってしまう その前においでよ

           その前においでよ

           その前においでよ

 

7.記憶と暮れる

 

 

夕空の下 言葉を消して

歩きつづける 一人を噛み締めて

 

赤い昨日が 呼吸を始めて

ひとつひとつが 僕の首を締める

 

幸せはいつも灰になり

風に吹かれる

苦しみはいつもとめどなく

刺さりつづける

 

街行く人の 鮮やかな声が

真っ赤に染まり ゆっくり溶けてゆく

 

 

夕闇の下 言葉を消して

歩きつづける 記憶と暮れながら

 

冷たい風が 傷に吹きつけて

冷たい声が 今 よみがえる

 

幸せはいつも灰になり

風に吹かれる

苦しみはいつもトゲになり

残りつづける

 

前を向いても 後ろを向いても

今は光が どこにも見えやしない

今は光が どこにも見えやしない

 

 

8.夜

 

青い夜の下 独りで走る

冬のはじまり 強い風が吹く

正しいと思った道がかすんで消えた

 

冷えた心を 温めるものを

見つけられぬまま 森に迷いこんだ

つめたい闇の中で誰かを探した

 

 

そして目の前に 現れた行き止まり

全て諦めた もう手遅れと

むせび泣く声が 夜に吸い込まれてく

激しい雨が 襲いかかって

 

濁った言葉が 厳しく打ちつけ

白いあこがれは 儚く崩れて

一人の夢が ひっそり消えた

 

 

 

 

9.痛みの後に

 

全てを抱えながら きみは生きてゆく

昔の傷さえも   ふとした時疼くけど

流れ出た血を   誰かに認められたら

それが支えとなって 呼吸がつづくよ

 

雨や風の中 ありがとうと思える

ものを一つでも 多く抱きしめよう

強い哀しみで 目が濁らぬように

喜びに少しでも しがみつこうよ

 

雨が止んだら まぶしいところにゆこう

素敵な誰かと 出会えるはずだから

 

「あの日の痛みも あの日の絶望も

全て刻まれて 今のきみがいる」

 

いつか自分も他人も 受け容れられたら

そこから優しさが 溢れ出るはず

優しい心が   次の優しさを産んで

叫び声の膨らみに 歯止めをかける

 

全てをさらけ出して 抱き締め合えればいい

最後はゴミも花に 変わるといいね

 

「あの日の思いも あの日の爪痕も

 全て刻まれて  今のぼくがいる

 

 あの日の痛みも あの日の絶望も

 全て刻まれて  素敵なきみがいる」